「人は、人生の3分の1の時間を睡眠で過ごす」と言われますが、あなたは良質な睡眠をとれていますか?
「忙しくて時間がとれない」「疲れているはずなのに寝つけない」など、睡眠に関する悩みを抱えている人も多いと思います。私も、たっぷり寝たはずなのに寝た気がしなかったり、不安や考えすぎで眠れなかったという経験をたくさんしてきました。
忙しさのあまり、睡眠をないがしろにしていませんか?
睡眠は心身の健康のために、極めて重要です。
快眠のための習慣を取り入れ、ストレスに負けない心身を作りましょう!
睡眠の役割
睡眠の主な役割は、心身の疲労回復です。
質の高い睡眠をとることで、
・記憶の整理、定着
・自律神経やホルモンのバランス調整
・脳の老廃物の除去
・免疫力向上
などの効果が期待できます。
睡眠は、心身をリフレッシュさせ、私たちが認知できていない不調の原因も取り除いてくれます。
慢性的な睡眠不足の問題点
慢性的な睡眠不足は、
・睡眠障害
・うつ病などのメンタル疾患
・高血圧や糖尿病などの生活習慣病
・集中力判断力の低下による事故
など、様々なリスクを高めることが確認されています。
例えば、不眠症状のある人は、糖尿病のリスクは2〜3倍、高血圧になる可能性は約2倍にもなります。特に認知症などは、睡眠不足の蓄積によって、数十年後に発症するリスクを高めます。
睡眠不足は脳の働きを乱し、自律神経やホルモン等のバランスが取れなくなり、心身の不調を引き起こします。
そして、この睡眠不足による負債は蓄積していきます。無理をすると、次第に身体・感情・認知、全てに影響が出るため注意が必要です。
睡眠のポイントは「時間」と「質」
睡眠の効果を最大限得るために、「時間」と「質」を意識しましょう。
適切な睡眠時間
人間の適切な睡眠時間は、6~8時間程度と言われています。もちろん、年齢や個人によって異なります。
睡眠時間が短すぎても、成長ホルモンの回復効果が十分に発揮されませんし、長すぎても体に負担がかかります。
昼間に眠くなることがある人は、体に負担がかかっているサインです。日中のパフォーマンスを上げるためにも、睡眠時間を増やしてみてください。
睡眠の質を高めよう
十分寝たはずなのに、疲れがとれていないと感じる場合は、睡眠の質を上げる必要があります。
質の良い睡眠とは
① 寝つきがいい
② ぐっすりと深く眠れる
③ 目覚めたときスッキリしている
の3つが満たされている状態をいいます。
どれかひとつでも満たされていない場合は、睡眠の質を見直してみましょう。多忙で十分な睡眠時間を確保できない人こそ、質の高い睡眠が必要ですよ。
睡眠の質を高める習慣【朝】「セロトニン」
睡眠の質を上げるための習慣をご紹介します。
同じ時間に起きて、光を浴びる
同じ時間に起き、太陽の光を浴びることで、体内時計を整えましょう。
私たちの身体は光によって体内時計をを調整しています。起きてすぐ、太陽の光を浴びることで「セロトニン」という神経物質が分泌され、覚醒します。そして朝、生成された「セロトニン」は夜になると、眠気を促す「メラトニン」という神経物質に変化します。つまり、午前中太陽を浴び、明るい照明の下で活動することが、夜の快眠につながるのです。
また、休日は昼まで寝るという人も多いと思いますが、そういう日は、夕方眠くなったり、夜眠れなくなったりしませんか?
体内時計を崩さないことが、睡眠の質を上げるためにとても重要です。「寝だめ」はできません。「最近寝不足が続いているな…」というときは「少し早く寝る(30分程度)」ぐらいで調整するのが適切です。
睡眠の質を高める習慣【就寝前】 寝る前2時間ルーティン!
寝る前の1~2時間のルーティンがしっかりあると、スイッチを切り替えられ、気持ちよく入眠できます。
色んな考えが巡ってしまっているときでも、寝る前に1時間の変わらないルーティンがあると心を落ち着かせることができます。
寝る前に取り入れるべき、4つの習慣をお伝えします。
1. 入浴
入浴は、睡眠の質を高くするために非常に重要です。この入浴でポイントとなるのは体の「深部体温」。「深部体温」が下がっていく時に人は眠たくなります。
入浴時の注意点は「のぼせ」です。熱い温度のお風呂は逆に交感神経を刺激してしまい、リラックスできません。のぼせないように、じっくりと体を温めることで、自律神経である交感神経から副交感神経が優位になるように切り替わり、心身をリラックス状態にしてくれます。「38〜40度の少しぬるめの温度で、お湯は心臓ぐらいまでにして入浴する半身浴が最適です。ぬるめの温度のお風呂に入ることで体に負担をかけずに「深部体温」を温めることができます。
入浴時間は、おでこに汗をかかない程度がちょうどいい時間になります。
【入浴時間の目安】
・38度の少しぬるめのお湯の場合:25〜30分程度
・40度のお湯の場合:15~20分程度
・42度の熱めのお湯の場合:5分程度
また、就寝時間から逆算して1~2時間前までに入浴するのが理想的です。
2. 就寝前の飲食の注意点
寝る直前の食事・飲酒を控える
食事は、寝る2時間前までには済ませましょう。食事をしてすぐ寝ると、成長ホルモンが分泌されないため、睡眠の質が下がってしまいます。
そして、寝酒は控えましょう。寝酒によって寝つきはよくなるかしれませんが、睡眠の質は低下します。眠りが浅くなり、夜中に目が覚めてしまうなど、睡眠を妨げます。
その他、チョコレートや緑茶などカフェインも寝る5~6時間前ぐらいからは控えましょう。カフェインは眠気を抑制し、覚醒させる作用があります。
白湯やハーブティーがオススメ
睡眠中はみなさんが思っているよりもたくさん汗をかき、水分が失われています。軽い脱水状態になる恐れもあり、それが原因で逆に睡眠が浅くなってしまうこともあります。就寝前には、コップ一杯程度の水を飲むことで脱水症状を防ぐことができます。寒い季節は白湯もオススメです。体の内部から温めて、副交感神経の方を優位にしてくれます。
また香り高いハーブティーでリラックスするのも良いですね。
白湯もハーブティも一気に飲まずに、30分程度かけてゆっくり飲んで体を温めてくださいね。
3. ストレッチなどの軽い運動
ストレッチやヨガ、深い腹式呼吸などを行いましょう。寝る30分~1時間前が目安です。
寝つけない理由の1つとして、日中の活動による脳や神経の緊張状態が高まったままで、脳がリラックスできていない場合があります。
軽い運動をする際のポイントは、呼吸です。ストレッチや腹式呼吸をゆっくりと行うことで、呼吸が深くなり脳の緊張を解くことができます。
※ 筋トレのようなハードな運動は、心拍数や血圧を上げてしまうので寝る直前は避けた方がいいです。眠る1時間半前には終わらせるのがよいでしょう。
リラックス効果抜群!おすすめのストレッチ
【腕のリラックス】
ダンベルを上げる動作で両腕を曲げて5〜10秒間ほど力を入れる。その後、脱力。脱力の時間は20〜30秒間。それぞれを2〜3回ずつ繰り返しましょう。
【下半身のリラックス】
足首に枕などを置き、力を入れて膝を手前に引き上げ5〜10秒間ほど力を入れる。その後、脱力。脱力の時間は20〜30秒間。片足ずつ行う。それぞれを2〜3回ずつ繰り返しましょう。
4. スマホを見ない、照明を暗くする
先にも説明したように、光は私たちの体内時計に大きな影響を及ぼしています。そして、夜の光は特に注意が必要です。スマホやパソコンから発されるブルーライトは、睡眠物質の「メラトニン」を抑制し、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなるなど、悪影響を及ぼします。就寝前、スマホやパソコンを見る機会を減らしたり、ナイトモードなどで色温度の調整をしましょう。
また、寝る1時間前には、部屋の照明を落とし、オレンジ系の暖色の光に変えましょう。暖色系の光を目にすると、睡眠物質のメラトニンが分泌され、眠る準備に入ります。
さらに、寝ている間は、照明を消し、可能な限り真っ黒にすることがおすすめです。「メラトニン」は、光によって分泌が抑えられてしまうため、電気は忘れず消してから寝ましょう。
睡眠の質を高める習慣【就寝時】寝具選びのコツ
より良い睡眠のために最も重要なのが寝具です。人は人生の1/3は睡眠をしています。この長い時間をより良い睡眠とするためにも枕や布団、マットレス等自分の身体に合ったアイテムで、睡眠の質を高めましょう!
【枕】 形と高さに注目
枕を選ぶ上で重要なのは、素材よりも形と高さです。起きた時に肩が凝っていたり、痛みがある場合は、枕の高さが合っていないというサインです。
身体にあっている形と高さのポイントは「立っている時の姿勢に近い状態をキープできているかどうか」です。また、寝返りしやすさや呼吸が自然とできる状態で、横向きの姿勢でも肩が圧迫されないということにも気をつけて選んでみてください。
仰向けに寝た際に、横から寝ている頭をみた時に、耳の穴と目を結んだ線が天井に向かって垂直になっている状態が高さを選ぶ時の一つのポイントです。
みなさんが自宅で使用しているマットレスと、店舗のマットレスは硬さが異なるので、迷ったら低めの枕を購入して、調整するのがいいでしょう。
枕の寿命は1〜10年です。長期間使用しているとへたってくるので、この機会に見直してみてもいいかもしれませんね。
【布団】 放湿性に優れた良質の羽毛がベスト
布団の素材は様々ありますが、ウォッシャブルタイプも多いポリエステルのほか、羽毛がメジャーです。使われている鳥の毛は、柔らかなダウンと軸が含まれた硬めのフェザーがありますが、混率はダウン90%以上が良いでしょう。1gあたりの羽毛の膨らみ具合を示す「ダウンパワー」も大切な指標です。数値が大きいほど高品質を表していて400ダウンパワー以上がおすすめです。
また掛け布団を多くし過ぎるのは睡眠の質を下げてしまいます。2枚程度にして、敷き寝具(敷き布団や毛布)で調整してみてください。掛け布団が多くなると重くなり、寝返りしにくくなってしまいます。
また寒い冬は湯たんぽや布団乾燥機、電気毛布などで人肌に温めておくのもスムーズな入眠を助けるアイテムになります。
【マットレス】 体圧の分散と寝返りのしやすさがポイント
多種多様な素材がありますが、大別すると反発力が高いコイル(スプリングコイル)と、さまざまな素材があるノンコイルの2種があります。また反発力の違いで、体重の分散性の高い低反発、寝返りがしやすい高反発に分けられます。
【選ぶ際のポイント】
① 仰向けの姿勢で寝た際に体圧が分散され、正しい寝姿勢を保てるか
② 横向きで肩や腰の圧迫感がないか
③ 寝返りのしやすさ
また百貨店で寝具フロアに行くと様々な寝具メーカーのマットレスを試すことができますが、ほんの数分寝てみただけでは自分にあっているのかどうか分からないという人も多いと思います。
特にマットレスは高価な買い物になるので、いざ自宅で使用したらちょっと違うかもしれないなと思ってしまう場合もあるでしょう。そのような時には、気になるマットレスを導入しているホテルに宿泊してみることをお勧めします。
睡眠に関するQ&A
みなさんが睡眠に関して疑問に思うことをピックアップしてお答えしたいと思います。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
Q 仮眠は取るべきでしょうか?
A 適度な仮眠は効率性を向上させます。
仮眠する際の気を付けるポイントは、「20分以内」と「午後3時まで」の2点です。20分以上の仮眠をとると眠りが深くなり、起きるのが辛くなってしまい、逆にもっと眠たくなってしまいます。
また、夜眠れなくならないように、仮眠するなら午後3時までが無難です。さらに仮眠の前にカフェインを含むコーヒーなどを飲むと、20〜30分後に効果が出てきて目が覚めやすくなります。
Q 何時間寝るのが最適でしょうか?
A 個人差がありますが、概ね6〜8時間の睡眠時間が良いです。
睡眠時間は長過ぎても短過ぎても体に悪影響を及ぼすという研究結果が出ています。研究では6〜8時間の睡眠時間が推奨されています。この6〜8時間の睡眠時間の間で、自分にとって最適な睡眠時間を把握して眠ることが大切です。寝不足気味だからと言ってたくさん寝過ぎることも避けるようにしましょう。規則正しいリズムで生活することが睡眠にとって大切です。
Q 寝だめはできるの?
A 残念ながら寝だめはできません。
「平日は遅くまで起きて、週末に寝だめする」という人がいますが、人は睡眠をためておくことはできません。しかし、眠りの借金である「睡眠負債」でしたら2〜3時間程度なら改善することはできます。また改善するためのポイントは就寝時間を早くすることです。早めに寝ていつもと同じ時間に起きるようにすることで寝過ぎによる体調不良も防げることができますよ。
Q 夕食はいつ取ればいいのでしょうか?
A 就寝の2時間前までに夕食を終えるようにしましょう。
就寝の直前に食事を取ると、交感神経が刺激され脳が興奮状態になり寝付きが悪くなり結果的に睡眠の質が下がってしまいます。睡眠の質が下がるだけでなく、睡眠中はカロリーをあまり消費しないので、寝る直前の食事は太りやすくなってしまいます。
Q 睡眠サプリ・睡眠導入剤は良くないのでしょうか?
A 適切に使用すれば、過度に避ける必要はありません。
ストレスの多い現代、近年は睡眠用のサプリや睡眠導入剤も日進月歩で進化しています。医師の指示のもと、自分に合うものを処方してもらって使用すれば、安全に質の高い睡眠が得られることでしょう。正しく理解して適切に使用することが何よりも重要です。必ず医師と相談の上で薬やサプリメントを使用するようにしてください。
Q 就寝前のスマホ使用は大丈夫でしょうか?
A 就寝の約1時間前からスマホの使用は避けた方がいいでしょう。
近年、スマホのブルーライトによる睡眠への悪影響が話題となっていますが、睡眠にとってさらに悪影響を及ぼしているのは、そのブルーライトよりも閲覧しているネット情報やSNS、ゲームなどです。就寝前に興味があることを目にすると、脳は興奮状態となり交感神経が優位となり、入眠を妨害してしまいます。寝る1時間前からはスマホを触らず、読書等することの方が眠気を催して、自然と眠たくなってきますよ。
まとめ
ひと口に睡眠の質を高めると言っても、様々な要因が関係しています。
今睡眠にお困りの方は、まずはできるところから1つずつ日々の生活に取り入れて、実践してみてください。
就寝前のひと時を楽しみながら、睡眠の質を高めていけるといいですね。そして気持ちの良い朝を迎えましょう!