【質問1】 臨床心理士はどんな仕事で、何を解決してくれるの?
心理士の仕事は、クライエントの悩みを専門的な知見から分析しながら、解決への手立てを共に考え、試していくことです。
クライエントの全体像の理解や、得意・不得意を把握するために、心理検査や知能検査を導入することもあります。
解決したい事柄はさまざまです。例えば、
・人との関係がうまくいかない
・仕事ができなくなってしまった
・トラウマ体験を思い出してパニックになってしまう
・より良く生きるために辛い過去を手放したい
などなど…
こうした悩みに対し、まずはじっくりと耳を傾けます。そして、どういう時にどういうメカニズムで困り事が起きているのか分析し、仮説を立てて解決方法を提案したり、話すこと自体がカタルシス(浄化作用)になったりします。
また、対個人だけでなく、カップルセラピーや家族療法などの専門家もいます。
初回面接でクライエントの困り事とニーズを聞き、より専門的な介入が妥当だと判断されれば、他機関へ責任を持ってお繋ぎすることもできます。
【質問2】 カウンセリングの目的はなに?実際にどんなことをするの?
カウンセリングの目的は、クライエントさんのニーズによってさまざまです。
ただ、そのニーズだけでなく、背景にも目を向けるのが心理士の大事な役割ですね。
例えば、「人のことが信用できない。だから恋人のこともいつも疑ってしまい、そういう自分が嫌になるんです。どうやったら恋人を信用できますか?」と相談しに来てくれたクライエントがいたとします。
ここで、「じゃあ信用できるように訓練しましょう!」といっても根本的な解決とはいえないでしょう。
どんな事をどんな風に疑っているの?そういう気持ちはいつから持っていたの?自分が嫌になると、どんな気持ちになるの(悲しいのか、怒りなのか、諦めなのか…)?
などを少しずつ紐解いていきます。
そうすると、「小さい時親とケンカして、スーパーに置いて行かれてしまった時から人を信用できなくなった。自分はいらない子なんだって思った」など、心の奥にずっと抱えてきた傷つきに気付く事があります。
そうしたら、その時の小さい自分の感情を呼び起こして、大人になった自分と出会い、しっかりと癒してあげる。「怖かったよね」「悲しかったよね」「もうひとりじゃないよ」と声をかけてあげる。
こうした体験を経ることで、少しずつ人とのつながりが回復していく…という具合に、クライエントと一緒にいろいろと心のうちを探索していくのがカウンセリングです。
もちろん、これは例のひとつです。
心理学の学派や理論は多岐にわたります。
精神分析的心理療法のように無意識的な領域を主に扱う場合もあるし、認知行動療法のように具体的な計画を立てて取り組む場合もあります。
ただ、心理士になるにはこれらの学派や理論を全般的に学んできているし、理論自体も互いに影響し合ったり、補完し合っています。
なので、技法はさまざまあっても、現代においては心理士の視点が極端に偏ることはあまりないと思われます。
【質問3】 ぶっちゃけ、カウンセリングって効果あるの?
様々な学派や理論の心理療法があると書きましたが、効果研究は多くなされており、エビデンスも確認されてきています。
ただ、全てのカウンセリングに効果がありますよ!などと言うつもりはありません。
そうしたなかで学派や理論の垣根なく、効果的なカウンセリングを受けるために重要な要素のひとつに「クライエントとセラピストの治療関係」があげられるでしょう。
悩みを人に伝えるというのは、とても勇気のいることです。初めて会うセラピストに話すのは特に緊張したり、「本当にこの人に話して大丈夫かな?」などの疑念が湧いても無理はありません。
良い治療関係とは、こうしたネガティブなことも伝え、ありのまま受け止められることです。
何度か会っていく中でも、やはり心のどこかに疑念が残っていたとします。
そこで、「どうも心の底からは先生のことを信用できないんです」と言って怒られてしまうようなカウンセリングは、良い治療関係にあるとは言えません。
セラピストは驚いた顔をするかもしれないけれど、それを伝えてくれたことを心から歓迎します。
そこからクライエントの理解も深まるし、新しくより良い関係も始まっていくのです。
こうしたやりとりができる関係こそが、良い治療関係といえます。
また、セラピストの人となりが全くわからないのも不安ですよね。
最近はSNSで発信しているセラピストも増えているので、「心理療法」「カウンセリングオフィス」などで検索してみるのも良いかもしれません。そのセラピストの言葉や、話題にしている本、他のセラピストとの会話などから人柄が少しでもイメージできるかもしれません。
ただ、SNSは日常に食い込んでくるものです。カウンセリングと日常の境目が曖昧になってしまうので、セラピストのSNSの見過ぎには気を付けましょう(笑)
もしそれで困る感じや戸惑いがあれば、それもセラピストに率直に伝えてみてください。
悩みを人に話すというのは、とても勇気のいる事です。「よく分からないのだけど、困っているからまずは話しをしにきた」と言っていただいて大丈夫です。話そうとしてくれていること自体、とても尊いことですから。
臨床心理士 Haru