社会では誰もが人と繋がり、人とコミュニケーションをとりながら、生活しています。避けることができない他人とのコミュニケーション。誰もが気持ちよく人と接し、お互いに尊重し合いながら生活できれば、人生が豊かになると思いませんか?
しかし、実際には多くの人が人間関係に悩まされ、自分の思っていることを伝えられなかったり、攻撃的な人の言動によって精神的に疲れてしまうことがあると思います。
自己表現力を高めてストレスをコントロールすることで、人間関係がラクになる技術、「アサーション」について全3回のシリーズでお伝えしていきたいと思います。
アサーション(アサーティブ)とは
アサーションとは
引用:Wikipedia
・自他を尊重した自己表現もしくは自己主張のことである。
・アサーティブなコミュニケーションとは、自分と相手の人権 (アサーティブ権) を尊重した上で、自分の意見や気持ちをその場に適切な言い方で表現することであるとされる。コミュニケーションの重要な技法である。
アサーションを学ぶことで、「人はみんな考え方が違う」「自分の考えを自由にもっていい」「”いやだ”と伝えても、関係性が悪くならない」など、ありのままの自分でいても大丈夫、正直な気持ちを伝えることが大切であると感じられるようになると思います。
3つのコミュニケーションタイプ
コミュニケーションには、大きく3つのタイプがあります。それぞれのタイプを詳しくみていきましょう。あなたはどのコニュニケーションタイプに当てはまるか考えながら読んでみてください。
① 自分の事だけを主張「攻撃的タイプ」
「攻撃的タイプ」は、第一に自分の存在や考えを優先し、相手の気持ちを考えずに、コニュニケーションを行うタイプです。
自分の気持ちに嘘はつかず、考えていることを相手に伝えることはできますが、相手が自分の発言を受けてどのような気持ちになるのかを考えないため、相手に不快な気持ちを与えてしまいます。
また攻撃的タイプであっても、優しい口調の人もいますが、相手に選択する余地を与えなかったり追い詰めて思い通りに相手を動かそうとする人も、このタイプに当てはまります。
自分と相手の立場を表すと、「自分>相手」となります。
② 相手を常に優先し自分は後回し「非主張的タイプ」
「非主張的タイプ」は、常に自分の感情を後回しにして、相手の意思を優先して迎合するようなコミュニケーションを行うタイプです。
一見、相手に配慮してうまくコミュニケーションをとっているように見えますが、自分の気持ちや意見を押し殺している場合があります。自分の意見を主張せず、相手の意見に合わせてあげたというように、自分の気持ちにも、相手の気持ちにも率直ではありません。
このようなコニュニケーションを続けると欲求不満が高まり、「(相手が言ったように)やってあげたのに」、「なんで自分ばかりこうなるんだ」など、ストレスが溜まってしまいます。
自分と相手の立場を表すと、「自分<相手」となります。
③ 自分も相手も尊重「アサーティブタイプ」
「アサーティブタイプ」は、自分の気持ちや考えを相手にきちんと主張して伝えるけれども、相手の意見や気持ちも大切にするタイプです。自分の気持ちや考えに正直で、相手への配慮ができ、その場面に最適な方法でコミュニケーションを行うタイプです。
自分と相手の立場を表すと、「自分=相手」となります。
次の2つの場面を想像してみてください。あなたはこの場面に遭遇した時にどのような行動を取りますか?
【外食中】
〈注文と違うものが出てきた〉
・何も言わない(非主張的)
・テーブルに呼び、替えてほしいと丁寧に頼む(アサーティブ)
・大声で怒鳴りもう一皿要求。夕食の雰囲気はすっかり台無し(攻擊的)
【親子関係】
〈子どもが深夜に帰ってきた〉
・帰ってきたのを見て、何も言わず、黙って眠りにつく(非主張的)
・相手を責めずに、はっきりと自分の気持ちを伝える(アサーティブ)
・いきなり怒鳴る(攻擊的)
アサーティブタイプへの第一歩
アサーティブでない状況を振り返る
どんな状況下でも攻撃的な表現しかできない人や、非主張的な表現しかできない人もいます。
また、友人や家族など親密な関係の人にはアサーティブでいられるのに、仕事関係の職場の上司や同僚、部下には非主張的であったり、逆に攻撃的になるなど、コニュニケーションをする相手によってアサーティブな対応ができない人もいます。
そのような人は自分はどのような状況の時にそのように攻撃的になったり、非主張的になったりしてしまうのか日頃の言動を振り返ってみることから取り組んでみましょう。
互いに歩み寄る
どんなにアサーティブに表現したとしても、相手が攻撃的タイプであったり非主張的タイプの人であれば、受け入れてもらえないかもしれません。お互いに意見を言い合えば、どうしても衝突する場面もあるでしょう。
その時には攻撃的に相手を論破したり、諦めて相手に合わせたりするのではなく、お互いが納得できる地点に歩み寄って妥協点、落とし所を探す姿勢がアサーティブなあり方になります。
自分のアサーション度を測ってみよう
次のチェックリストを読み、該当するものに◯を付けてください。
また、「はい」の場合であっても、そこに否定的・攻撃的・無視する意図などの感情を含んでいる場合は、◎を付けてみてください。
【A 自分から働きかける言動】 | はい | いいえ |
・誰かに対して良い印象を持ったとき、その気持ちを表現できます。 | ||
・自分の長所や、成し遂げたことを人に言うことができますか。 | ||
・イライラをおさえることができますか。 | ||
・見知らぬ人たちの会話の中に、気楽に入っていくことができますか。 | ||
・会話の場から立ち去ったり、別れを言ったりすることができますか。 | ||
・自分が知らないことや、分からないことがあったとき、説明を求めることができますか。 | ||
・人に援助を求めることができますか。 | ||
・人と異なった意見や感情をもっているとき、それを伝えることができますか。 | ||
・自分が間違っているとき、それを認めることができますか。 | ||
・適切な批判を述べることができますか。 | ||
【B 人に対応する言動】 | ||
・人から誉められたとき、素直に対応できますか。 | ||
・あなたの行為を批判されたとき、受け応えができますか。 | ||
・あなたに対する不当な要求を拒むことができますか。 | ||
・長電話や長話のとき、あなたは自分から切る提案をすることができますか。 | ||
・あなたの話を中断して話し出した人に、そのことを言えますか。 | ||
・あなたは人からの誘いを受けたり、断ったりすることができますか。 | ||
・押し売りを断れますか。 | ||
・あなたが注文したとおりの物(料理や洋服など)が来なかったとき、そのことを言って交渉することができますか。 | ||
・あなたに対する人の好意がわずらわしいとき、断ることができますか。 | ||
・あなたが援助や助言を求められたとき、必要あれば断ることができますか。 |
【診断結果】
全体で「いいえ」の数が10個以上ある
アサーション度 「低」
自分よりも他人を優先し、自分のことは後回しにしがちです。自分の気持ちを抑えこんでいるため自分の気持ちを相手に伝えることが苦手であるということができます。
全体で「はい」の数が10個以上ある
アサーション度 「高」
あなたのアサーション度は普通以上です。自分の気持ちを主張しながらも、相手にも配慮したコミュニケーションが取れています。
・AとBでは、「いいえ」の数はどちらが多いですか?
「いいえ」の数が多い方は、自分を表現することが苦手な方だと考えられます。
・◎を付けた項目は、自分の気持ち自体は大切にしていると考えられますが、相手の気持ちを配慮しない言動をとってしまっているかもしれません。
アサーティブタイプになるためにはどうすればいい?
なぜ人は「攻撃的なタイプ」や「非主張的なタイプ」になってしまうのでしょうか。
このようなタイプの人はどんな状況であれ、どんな相手に対しても同じようなコミュニケーションをとってしまいがちです。なぜそうなってしまうのでしょうか?
それは、「心に余裕がない」からです。不安や緊張などで心が落ち着かないため、相手にそれを感じ取られないように攻撃的になったり、自分の意見を主張しないというコミュニケーションをとってしまっていると言えます。
この状態から抜け出し、アサーティブタイプになるためには、「自分自身を好きになること」「自分の気持ちを明確に把握すること」がまず第一歩になります。
自分の気持ちを明確に把握する方法として、思ったこと感じたことに「私は」と主語をつけ、文章にして伝える練習をしてみましょう。
【主語をつける】
・「にらまれた」
→「私はにらまれたと思った」
・「早くしなさい」
→「私はあなたに急いでほしい」
【伝え方の例】
・「あなたがにらむから、嫌だ」
→「私は、あなたの目を見て、にらまれたと思ったので、怖くなった」
・「きみはグズだから、腹が立つ」
→ 「私には、きみの動きが遅く感じられるので、もう少し急いでほしい」
まとめ
アサーション(アサーティブ)という言葉を初めて知った方も多かったのではないでしょうか。
自分を知り、自分の気持ちを把握することが人間関係をラクにする第一歩になります。
次回は、思い込みをなくす「考え方」についてお伝えしていきます。
【参考文献】
平木典子(2009) 「図解 自分の気持ちをきちんと伝える技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ」PHP研究所